<Devonshire splits/Cornish splits デヴォンシャースプリッツ/ コーニッシュスプリッツ >
クロテッドクリームといえば?「スコーン」。ではスコーンといえば?「クロテッドクリーム」~それくらい切っても切れない関係のこのふたつ。~と言うか、スコーンにつける以外にクロテッドクリームっていつ食べるの?と思われている方も多いはず。確かに日本ではスコーンと一緒以外には登場しないクロテッドクリームですが、イギリスのクロテッドクリームの産地、デボンシャーやコーンウォール地方ではりんごのケーキはじめさまざまなケーキやプディングに添えたり、アイスクリームやライスプディングを作ったり、ファッジにしたりと、ちょっとリッチな生クリーム的な感覚でいろいろなものに利用します。
中でもわたしが、もしかしたらスコーンと食べるより、こちらの方が美味しいのでは、くらいに思っているのが「デヴォンシャースプリッツ」。Bun(バン)やroll(ロール)と呼ばれる小型のイーストで膨らませるパンにクロテッドクリームとラズベリーかいちごジャムをサンドしたもの。このパンは牛乳か生クリーム、バターと時にはラードが少し入ったふんわりしっとりした食感のもの。これにミルキーなクロテッドクリームとちょっと酸味のあるジャムの組み合わせはもう絶妙。スコーンよりずっと主張しないので、クロテッドクリームの優しい甘みを存分に堪能できるのです。ほぼ同じものなのですが、それよりちょっぴりサイズが大きくなって、コーンウォールで食べられているのが「コーニッシュスプリッツ」と呼ばれます。
今でこそこのどちらの地域でもクロテッドクリームをつけるのはもっぱらスコーンと相場は決まっていますが、もともとコーンウォール地方ではクロテッドクリームのお供は、スコーンではなく、このバン(スプリッツ)のほうが主流でした。このスプリッツという名前、パンを二つに Split(割って)してクリームをサンドするからというのもあるのでしょうが、第二次世界大戦以前、この辺りの地方では、バターやラードを使ってちょっとリッチに焼き上げた小型のバンやロールを「splits」あるいは「Chudleighs」と呼んでいたから、というのもあるそうです。このパンはオーブンから出すとすぐに、バターペーパー(バターを包んでいた紙)を表面にこすり付けて布で覆い、外側も柔らかな食感にするのが特徴なのだとか。ちなみに、Chudleigh というのはデヴォンシャーにある小さなマーケットタウンの名で、何故この町の名で呼ばれるようになったのかは謎。実は他にもこの小型パンには「rounds」「tuffs」「farthings」「ha’penny buns」なんて色々な呼び名があるのだそうです。名前はともかく、一度試して欲しいこのパンにクロテッドクリームとジャムの組み合わせ。パンを焼くのが大変なら、近所のパン屋さんでほんのり甘い、普通の小さなパンを買ってきてもらえばそれでもOK、パン自体は実にプレーンな白パンですから。それにしても目からウロコの美味しさ、まぁスコーンが今のようにメジャーになる前は皆こうして食べていたのですから、美味しくて当然かもしれませんが。生クリームバージョンもありますが、断然クロテッドクリームがおススメですよ。
なんでもデヴォンシャーにあるTavistock Abbey では11世紀に、クリームとジャムをバンに添えて提供していたという資料が見つかったとかで、常にコーンウォールとどちらがクリームティー(紅茶&スコーンにクロテッドクリームとジャムの組み合わせ)の本場かを争っているデヴォンは、我こそクリームティーの発祥の地と大喜び。お隣同士ですから仲良くすればいいのにね、というのが正直なところですが(笑)。そうそう、デヴォンシャーあるいはコーニッシュスプリッツの別バージョンとして、ジャムの代わりに、ブラックトリークルやゴールデンシロップをかけるバージョンがあるのですが、こちらの名前は「Thunder and lightning(雷と稲妻)」というこれまた素敵なネーミング。そしてこれがまた実はとってもおススメなのです。ゴールデンシロップバージョンは少々お子様向けのテイストですが、ブラックトリークル(手に入らなければモラセスでも)だと、苦味の利いた大人の味(?)に。これまただまされたと思って是非一度お試しあれ~☆